~~~~~~~~次回出演~~~~~~~~

9月13日㈮「神楽坂のソウルフルナイト」<オ・シャンゼリゼ>(神楽坂)
歌:ほさか夏子
演奏<La Maladie D'Amour>pf.Frédéric VIENNOT gt.白𡈽庸介 bs.立原智之


詳しくはこちらからどうぞ⇒ ほさか夏子のスケジュール

 遠いからお前が好きだ

どうやら私のレコードは誰かに貸したままになっているらしい、
見つからなかった。
先日大量に「預かった」ルイジのレコードの中に
見つけたので、その写真を。


「先天性遠方憧憬病患者」高野圭吾さん。
これは彼自身の言葉だ。
レコードのタイトルは「遠いからお前が好きだ」。
ジャケットも、「憧憬」と「自画像」。
絵を描き、訳詩をし、歌を歌った。


私は彼の「プレリュード」という歌が好きだ。
(このレコードには入っていませんが。)
男が恋に落ち、
その深みへと一歩足を踏み出そうとしている、その時を描いている。
甘く悩ましく蠢く、すぐ目の前にある新たな世界、
しかし、そこへ足を一歩踏み入れた瞬間にそれを一瞬にして失ってしまうかも知れないという畏れ。
大切なものだから、
この今の甘くせつない瞬間があまりにもすてきだから、永遠の世界に閉じ込めたいから、
壊したくない、大事にとっておきたい、眺めていたい、近づいてはいけない、
遠いからお前が好きだ・・・。
「僕は怖い・・・」で始まるこの歌。
原詩を読んだことがないので、彼が直訳をしたのかどうか、
彼自身の世界が訳詩の中にどこまで入っているのかどうかは、解らない。
しかし、彼がこの歌を歌うと、
そのガラス細工のように華奢で脆い男の精神と揺れ動く心に、
胸が締めつけられるのだ。
まさしく、恋の歌においても
「先天性遠方憧憬病患者」は発病し、
その精神世界を独特の声と節であらわにしてくれるのだった。
こんなデリケートな男心を歌える歌手が、他にいるだろうか。


実は身の程知らずにも、この歌を歌いたいと思ったことがある。
だがすぐに無理だと判断した。
昔、バイセクシャルの男に恋をしたことがある。
その時、どうしても入っていかれない、どうしても一緒になることのできない世界を知った。
「精神の、彷徨い・放埓・愛」である。
自分という木が大きなナタで根元からぶった切られた。
それからしばらくの間、テレビを見ても新聞を読んでも映画を見ても何をしても、
ゲーゲーと吐き気を催した。
なぜなら、そこに、この世界すべてに、
「男の精神の彷徨い」を見たからだった。
自分の目線に引き摺り下ろし、なで触り、懐に入れないと理解できない私には、
どうしても入っていけない世界だった。
嫉妬した。
泣きながら胸を晒でぎゅうぎゅうに締め付けた。
男になりたいと本気で思った。
なれるわけはなかった。


ああそうだ、高野さんの話だった。
上野に何度か足を運んだことがあるが、
彼の絵もまた「遠方憧憬」を語っていた。
彼の大好きな船と、白い服の女性・・・綺麗な絵だった。
私にはない、できない世界。
どうやら、すでに亡くなった人に、
私は嫉妬し始めているのかも知れない・・・。


■追記/ネットで高野さんのこんな言葉を見つけた。  

   
   一つの夢の終りは
   一つの夢の始まり……。
   年ごとにリラは咲く。
   唄は祭。
   祭の終りは淋しいのが当たり前。
   淋しいのが僕らの仕事。
   唄ごとに生きて
   死ぬのが僕らの仕事。     高野圭吾


   (1999年1月、PETAXニュース70号より)


■すぐに書こうと思っていたのに、仕事で日が空いてしまいました。
9月3日も迫ってきていますので、これからしばらくカメさんモードに入ります。