~~~~~~~~次回出演~~~~~~~~

9月13日㈮「神楽坂のソウルフルナイト」<オ・シャンゼリゼ>(神楽坂)
歌:ほさか夏子
演奏<La Maladie D'Amour>pf.Frédéric VIENNOT gt.白𡈽庸介 bs.立原智之


詳しくはこちらからどうぞ⇒ ほさか夏子のスケジュール

 2003年9月 秘密の花園シリーズ(カメラ・アドヴォケイト)


                  「西壁のトレニア」


殺風景な西壁のこんな隙間に、以前おとなりから飛んできたらしい種で花が咲いたことがあった。花の種類はもう忘れてしまったけれど。で、この前年、横のほうの少し広い隙間にトレニアを植えてみたんだね。そうしたらちゃんと種を残していってくれて、こうしてこの年も花を咲かせてくれました。今は野生のポピーがそれに取って代わっています。



・・・・・・・・洋食屋 「トレニア」・・・・・・・・


トレニアといえば、「トレニア」という洋食屋さんが数年前まで八王子にあってね、そこによく食べに行っていました。風変わりなご夫婦の店でね、「おじさん」は本が趣味で接客は大の苦手。ビールを注文した客が、10分ほど待ってもまだ出てこないので「すみません、ビールください」と言うと、「今やってます!」と返事が返ってくる(笑)。「おばさん」は一匹狼の動物愛護活動家。重役出勤ののち、店がはねるとご近所の野良猫の見回りにでかける。そういえばある事で相談に乗ってもらったこともあったなぁ。その時の「おばさん」の回答には今でも感謝しています。店は狭いながらも年月を経て変色した置物がたくさんあって、何年も通っているのに「あら、あんなところにこんなものがあったのね」と驚いたものだった。
もっとも昔は意気込んで店をやっていた時代があったらしい。その頃は八王子も織物景気で潤っていたから、トレニアにもそのおすそ分けがあった。けれど年月と共に、「おじさん」と「おばさん」、そして店も次第にトワイライトになっていったのだった。
ぐずぐずになるまで煮込まれたテールシチューも美味しかったが、カレーは独特で「トレニア」だけの味だった。見ることはできなかったが、メンチカツの工程はその作っている音からするとこれも独特らしく、揚げたり焼いたりしているようだった。
「おじさん」の父親は、麻布で米軍関係者の家庭のコックをやっていたという。面白い話をしてくれた。その頃のコックたちの間ではちょいと流行っていたそうで、気に入らない主人の子供には醤油で味付けした焼き飯を作るのだという。
「面白いよ、ヤツらが国へ帰ると子供がのたうちまわるんだ、醤油の味が恋しくてね、ははは。」
ちょっぴり哀しく可笑しいささやかなレジスタンス。
愛すべき店だった。のんびりワインを飲みながら、気長に料理を待ち、猫にさわり、おじさんと世間話をし、おばさんの出勤を待ち、ちょうどいいほろ酔い加減と腹具合で幸せになれる店だった。